紋が背中に付いている理由

2025/11/02

きものコラム

 





紋付の着物の紋は最も多くて5つあります。
背中の真ん中、後ろの袖、胸の三カ所です。
紋の数が多いほど格があがるので、最も格が高いのは五つ紋で5つ、背中と後ろの両袖、左右の胸です。
次に格が高いのは三つ紋で3つ、背中と後ろの両袖です。その次が一つ紋で1つ、背中のみになります。

三つ紋と一つ紋は前姿だけを見ると、まったく同じに見えます。胸に紋がつくのは五つ紋だけだからです。
「結婚式で集合写真を撮ったら、三つ紋と一つ紋はほどんど変わらないじゃないか」
と考えたくなりますが、これは現代的な感覚であって、昔は後ろに紋があるということが重要だったのではないでしょうか。

前から見ればお顔があり、誰だかすぐに分かります。しかし、後ろ姿では誰だかわかりません。背中の紋を見て「この方は○○家の方なんだな」と分かるのですね。
後ろ袖に紋があるのも、腕を動かしたときに目立つ場所だからだと思います。











器をとろうと手を伸ばす時、誰かを手招きしようと手を挙げる時、後ろ袖の紋が見えます。
お顔は見えなくても誰だかわかるように付けられているように感じます。
式典や講演会といった動きの少ない場面では、前の方の後ろ姿に目が行きます。そんな時に背中に紋があると、すっと目線が紋に行ってしまうように思います。

とある茶席で、とても背中の美しい、凛とした着物姿の女性がいました。私はその方の斜め後ろに座っていたので、お顔は見えませんでしたが、背紋は見えました。今まで見た事のない複雑なデザインの家紋でした。そこでハッと思い出しました。この流派の家元の奥様は宮家の方だと聞いた事があるのを。背紋でその方が誰なのかが分かったという実体験です。

紋は背中側にあるから効力を発揮するのです。



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